ホーム > ブレイクタイム > 天上天下唯我読尊 > 読書感想文 #0087 『行間を読む』

『行間を読む』

 
石黒圭著『「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける』光文社新書を読んでみた。誰でもが日常的に無意識にやっている「読む」という行為を分析し、より良い読み方を研究して技術的な方法を提示したのが本書である。我々の生活を振り返ってみると、「読む」という行為はあらゆるところでやっていることに気付く。朝起きて、新聞を読む。会社に着いてメールを読む。会議資料、伝達事項、掲示板を読むなど、我々ビジネスパーソンが働いている時間のほとんどは、この「読む」という行為に明け暮れているとも言える。
著者は、最初に「読む」という行為がどのようにして成り立っているのかを説明する。読む行為は、我々の頭の中であまりにも早いスピードで行われているため、意識することは難しいが、次の四つの活動が循環的なプロセスとしてくり返し起こっているという。つまり、画像取得活動→文字認識活動→意味変換活動→内容構成活動であるという。著者が言うには、一般的な読書術である本を速く読む速読では、「画像取得活動」と「文字認識活動」に焦点を当て、そこをトレーニングすることが多いという。しかし、本書においては「意味変換活動」と「内容構成活動」に焦点を当てて考えたという。
本書で語られている読む技術は、「スキャニング」(目的のキーワードを探す読み方)、「スキミング」(だいたいの意味をつかむ読み方)、「記憶」(読後に内容を再生できるような読み方)、「熟読」(書かれている内容を充分理解して、頭に入れるようにしながら読みすすめる読み方)、「味読」(書かれている内容を楽しく味わう読み方)である。著者は、これらの読み方を、変幻自在に変えながらTPOに合わせて読む方法を身につけるべきだという。これを読解ストラテジー(TPOに合わせた読み方の戦略)とし、さらに具体的な目的に合わせた効果的な読み方を解説していく。
本書後半の「行間ストラテジー」では隠れた意味を読み解く力として述べられており「行間を読む」ということに焦点が当てられている。「行間を読む」とは、書かれてあることをヒントにして、書かれていないことを読み手が推論することだという。つまり、著者の表現したい意図を見抜くことである。ここでは、宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」(『新編 銀河鉄道の夜』新潮文庫)を例に出し、行間を読むとはどういうことかを探る。私は小学生の頃に「セロ弾きのゴーシュ」を読んで、今ひとつ理解出来なかった訳がこれで解った。小学生の頃には、行間に込められた「語られない情景」が思い浮かばなかったのである。行間を読んで著者の意図を探りながら、あるいは解釈することは能動的でアクティブな行為にほかならない。読書が行間を推論することで頭を使う積極的な行為であるということがわかる。
スピードが要求されるビジネスパーソンにとって、本書の「読む」技術は無意識にやっている場合があるかもしれない。しかし、本書の「読む」技術を知ることで、今まで以上に、非効率な読み方をしていた部分が改善される。また、本書で多様な読み方を学ぶうちに、文章を書く時にも、読み手の視点を持つことが出来るようになると思った。

次回は、渡辺公三著「闘うレヴィ=ストロース」平凡社新書です。

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